音楽と演劇の年賀状展とはAbout

年賀状はアートじゃない。
でも、どうしたって送る人の個性がにじみでてしまう。
じゃあミュージシャンとか役者とか、ライブの現場の人たちの年賀状ってどんなのなんだろう。
というわけで、音楽や演劇やってるみなさんの年賀状をお披露目する展覧会です。

これは、初めて『音楽と演劇の年賀状展』を開催した2011年に書いたものです。あれから10年近い年月が経ち、2020年で『音楽と演劇の年賀状展』は10回目を迎えます。

「年賀状はアートじゃない」、本当にそうでしょうか。
年賀状は決まったフォーマットで、誰もが一度は書いたことがあるものだからこそ、その人の個性がにじみでてしまう。展示される作品の中には、かっこいいデザインの年賀状もあれば、お世辞にも達筆とは言えないけど愛らしい手書き文字の年賀状もある。結婚や出産を報告したり、既製品のはがきを使ったいわゆる “ふつうの” 年賀状があってもいい。年賀状を見れば、はがきの向こうにどうしたってにじみでてしまう「人」の姿が見える。“ミュージシャンや役者さんからの年賀状” ではあるけれど、年賀状を通して見える、いち個人としての「人」の姿が何よりおもしろい。そう思ってこの企画を10年続けてきました。

いま、日本を、この世界を取り巻く状況にはとても厳しい現実があります。たとえば、公共の中におけるアートの存在意義ひとつとって見ても、そこに足を突っ込んでいる自分は毎日のように絶望と、かなしみと、やりきれなさに打ちのめされます(デザインという仕事をしている自分にとって、公共とアートを繋ぐ立場から何ができるか、ずっとずっと考えています)。そんな今、年賀状展みたいなのんきな企画をやってる場合なんだろうか。誰かに何かを強く訴えたり主張を投げかけるようなキュレーションなんてここにはない。自分がやってることは毒にも薬にもならないことなんじゃないか、そう思ってこの企画を続けることに疑問を抱く時もありました。
でも思うんです。せめてお正月くらいは、家族や友達とゆっくり過ごしたり、テレビで駅伝見ながらこたつで昼寝したり、ポストに届いた年賀状を笑いながら眺めたい。そんなお正月を望まない人はいないんじゃないか。

誰も見たことがない表現、最前線のトレンド、社会に強く訴えかけるメッセージ、そんなものがここにあるかどうかはわかりません。でも確実に言えることは、今年も来年も再来年も「あけましておめでとう、今年もよろしくね」と言える世界であってほしいし、こんなのんきな展覧会が催される世界であってほしい。そう思いながら、10年目も、今までどおりの “お正月” を迎えられるよう、同じことを、同じように、続けていこうと思います。

この企画は、音楽と演劇をとおして、みんなのお正月と、たのしく暮らせる日々を守るための展覧会です。

『音楽と演劇の年賀状展10』、はじまります。

音楽と演劇の年賀状展
代表 山口良太


Photo: kozo kaneda

山口良太
1983年大阪生まれ。デザイン事務所勤務を経て、2012年よりフリーのアートディレクター/グラフィックデザイナー。“見慣れないものごとをわかりやすく、身近に。そしてたのしい気分になること” を大事に、「ストレンジシード静岡」、神戸アートビレッジセンター「KAVC FLAG COMPANY」、伊丹アイホール「現代演劇レトロスペクティヴ」など、地域に根ざした演劇の宣伝デザインを中心に活動している。音楽家や俳優から届いた年賀状を展示する企画『音楽と演劇の年賀状展』を企画・運営している。ごはんをおいしくたべる。

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イラスト:小山健(2012〜)


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